正直ガソスタでのエンジン停止は犯罪抑止のためだと思ってました、今の今まで。だって入れ終わったらそのまま逃げられちゃうじゃないですか。そりゃカメラ回ってるでしょうが。
ガソリンスタンドでの給油時、エンジンを止めていますか?
「当たり前だよ」「危ないでしょう?」そんな声が聞こえてきそうな質問だが、今年の夏、意外な体験をした。とある地方のスタンドで給油を頼み、エンジンを止めると、
「暑いでしょう。付けておいてもいいですよ」
といわれたのだ。
エンジンを止めれば、すぐに車内の温度があがり、汗が噴き出してくる真夏のこと。しかも、1歳の子連れ。ありがたい話ではあったが、本当に大丈夫なのか疑問に思った。ところが後日、別のガソリンスタンドでも同じことをいわれ、またビックリ。もちろん、こちらから訊ねたわけではない。
もしかして、ルールが変わったのだろうか? 総務省消防庁危険物保安室の担当者に聞いてみると、
「結論からいうと、そのガソリンスタンドの法令違反ですね」
実はというか、やはりというか、給油時のエンジン停止については、消防法などに基づく「危険物の規制に関する政令」の第27条、第6項にちゃんと定められていた。同項には、ガソリンスタンドなどの給油取扱所における取扱いの基準として、「自動車等に給油するときは、自動車等の原動機を停止させること」とある。原動機とはエンジンのことだ。
理由はガソリンの可燃性蒸気に引火するおそれがあるから。店員の申し出は親切心だったのだろうが、やはりルール違反なうえに危険な行為であったのだ。
ところで、セルフのガソリンスタンドでは、給油時の注意として、エンジン停止や火気厳禁のほかに、携帯電話の使用禁止を掲げているところもある。携帯電話までどうして? と思う人もいるかもしれないが、携帯電話も電子機器である以上、引火の可能性を完全に否定することが難しいから。ちなみに、ガソリンスタンドの電気機器には防爆構造のものが多用されている。
ただ、タバコや携帯電話については、法令に具体的な名称が出てくるわけではない。セルフのガソリンスタンドの取り扱い基準については、危険物の規制に関する規則(第40条の3の10)において、「非常時その他安全上支障があると認められる場合には、(中略)制御装置によりホース機器への危険物の供給を一斉に停止し、(中略)危険物の取扱いが行えない状態にすること」等と定められており、タバコや携帯電話の使用は、この“安全上支障があると認められる場合”にあたる。
これから寒くなる冬もエンジンを止めるのが少々辛い季節だが、安全には変えられない。安全運転とともに、安全な給油も心掛けたいものだ。