無駄話題も面白ければ取り上げるので役に立つかは人次第、ときには時間の無駄と思われても知人に教えて輪を広げる。それこそコネタの流儀!

2011年12月8日木曜日

大空を飛べ! プロペラ紙ヒコーキ

幼少期の折り紙の出来の有無が器用さを決定つけるものではなかろうか。無論それまでの指遣いとこれからの使い方でいくらでも変わるが、他所と比べて出来ない子供は自分には無理と考えてしまうのではないだろうか。

紙ヒコーキ。男女を問わず一度は折ったことがあるんじゃなかろうか。
普段は滅多にやらないが、たまに飛ばしてみると面白い。上手に折れるとビューンと飛んで、なかなか気持ちのいいものである。しかも近頃じゃ、その紙ヒコーキにプロペラ駆動を付けられるというではないか。

と、ここまで読んで「なぬ?」と興味を持って欲しいのが筆者の本音である。
そう、付けられるのだ。紙ヒコーキに。プロペラ駆動を。
面白そうじゃないですか?

しかしまあ一方では、
「紙ヒコーキにプロペラ付けて、一体どうするつもりだ」
という気持ちも正直ある。
要はすごく飛ぶんだろうけど、テストとかも、ちゃんとやったのかしら。
販売元のセンチュリーに聞いてみた。

センチュリーが展開する「白箱.com」は、海外のユニークな製品をいち早く国内に取り入れて、ユーザー様に最新の情報配信することをコンセプトとして展開しているサイト。このサイト内で販売されているのが、電動プロペラキット『ダ・ヴィンチ』だ。

「白箱.com」店長の平田さんに聞いてみると、『ダ・ヴィンチ』との最初の出合いは海外サイトの動画だったらしい。プロペラで、紙ヒコーキがガンガン飛ぶその動画を見た瞬間に発せられた言葉は、
「なんだこれは!」
だったという。

私も平田さんに促されるままに「白箱.com」の動画を見てみる。かわいらしい外国人の少年がおもむろに紙ヒコーキを飛ばすと……。

「なんじゃこりゃあ!」

言ってた。そりゃ言うよ。
だって、紙ヒコーキなのにバンバン大空を飛び回っているんだもの。もう、その驚きは言葉では伝えられないほど、結構なものだ。
ライターの無力を思い知るのはこんなとき。
ぜひ見ていただきたい、衝撃映像である。

「絶対にこの製品のポテンシャルに共鳴してくれる方が、きっと大勢いる。日本で紹介したい!」
という平田さんのパッションが社内で認められ、さっそく製品検証を行うために海外メーカーへアプローチ。数週間後、待望のサンプル機第1号が届いたのであった。

記念すべき第1回のテスト飛行前。
スタッフは「この細い軸とプロペラで、どれだけの感動を与えてくれるのか」と、まるで少年の頃に戻ったような、そんな高揚感を覚えたという。

そして、運命のファーストフライト。プロペラ付き紙ヒコーキが手から離れた2秒後……。無残にも失速、その紙ヒコーキは地面に激突。
お世辞にも飛んだとは言えない惨めな姿。
動画の少年のような笑顔で、「これはいい、イケますよ!」と盛り上がるはずが、思わぬ壁にぶち当たった。何しろ、飛ばないヒコーキは売れないのだ。

「絶対に飛ばしてやりたい!」
意地になったスタッフは、さっそく研究を開始した。
海外の動画を再生し、折り方、飛ばし方を徹底的に模索。また一方で紙ヒコーキの専門書などを読み、飛行理論の域にまで情報のアンテナを広げリサーチしたという。
もう、完全に紙ヒコーキバカである。

しかし成果が上がらないまま、1週間、2週間と、残酷に時間は過ぎてゆく。
「もう、このくだらない『プロペラ付き』にいつまでも時間を割いている訳にもいかんのよ。これ、仕事なのよね」
そんな声も社内上層部から聞こえてくる中、ついに彼らはあることを決意した。
「次のフライトでダメなら、販売は諦めよう……」

スタッフの考えは皆、同じだった。
それゆえに、ラストフライトになるかもしれないこのチャレンジでは、さまざまな素材の紙と多様な折り方の紙ヒコーキを準備。
これまでのテスト飛行はビルの間に吹く微風でのチャレンジだったが、風の質まで配慮し、乱流するビル風ではなく、風の通る場所に舞台を移した。
選ばれたのは、いわゆる海辺(お台場)と河川敷(荒川)。
最高の舞台が整い、スタッフが固唾を飲んで見守るなか、最後のチャレンジが行われた。

そして……。
そう、現在販売に至っているということからお察しのとおり、飛んだのである。
ラストチャレンジで、彼らの紙ヒコーキはダイナミックなフライトを成し遂げたのだ。その記録は1分を超える、驚愕のロングフライトだったという。

平田さんはその時の光景を思い浮かべ、目を細めながらこうつぶやいた。
「それこそ、まさに“絶望”という低空飛行から、“希望”という名の上昇気流にのった瞬間だったのですよ……」
すごいな。もう、なんかアノ番組のようだ。

というわけでこの『ダ・ヴィンチ』、よりよく飛ばすためには、1.「紙ヒコーキの折り方」、2.「風」、3.「飛ばし方」の3つのコツを押さえることだという。
とくに飛ばすときのポイントは「正面から吹く向かい風に対し、側面からそっと紙ヒコーキを乗せてやる感じ」。力を入れるほどよく飛ぶというわけではなく、いかに風に乗せるかがコツなのだそうだ。

詳細については「白箱.com」のサイト内で、飛ばし方のコツから折り方、動画解説、しかも折り方ガイドの入った用紙のダウンロードサービスまで、至れり尽くせりで紹介しているので、こちらを参照されたい。これもすべてのユーザーに、『ダ・ヴィンチ』の感動を届けるためだというが……。
平田さん、熱意がすごすぎるぞっ!

この『ダ・ヴィンチ』、「紙ヒコーキってこんなに楽しかったんだ」と心底感じさせてくれるアイテムだという。この感動に取り憑かれたからこその平田さんの熱意だ。信じても差し支えなかろう。
確かに話を聞いていたら、
「実際飛ばした日には、童心に帰りまくってしまうだろうなあ」
と感じ入ったもんなあ。

そろそろ年末~お正月の準備のシーズンだし、今年は凧じゃなくて紙ヒコーキを飛ばしてみようかな。