ドライブやクルーズなど移動そのものを味わう旅のスタイルはいろいろあるが、列車の旅はその代表格。ただ、最近は日本でも地方の廃線が増え、ローカル線の鈍行列車の旅ともなると、なかなかスケジュールが立てにくい。ところがそれを海外、それもアジアでやってみた人がいた。
『鈍行列車のアジア旅』(下川裕治、中田浩資[写真]/双葉文庫)はタイ、マレーシア、ベトナム、中国、台湾、韓国、フィリピンを鈍行列車でまわったユニークな旅の記録だ。
アジアの鈍行列車旅なんて聞くと、バックパッカーの若者を連想する人もいるかもしれないが、著者の下川さんは1954年生まれの57歳。ヘンにはしゃいだりせず、かといって冷めているわけでもなく。冷静な観察眼を保ちつつどこかお茶目で、その場の空気に自然となじんでゆく。淡々としているようで、車内の雰囲気が手に取るようにわかる文章が小気味よく、思わずププッと吹き出してしまうエピソードもいっぱい。椅子に座って背を正して読むというより、畳にでもゴロリと寝転がって読みたい一冊だ。
ひとくちでアジアの鈍行列車といっても、地域によってだいぶ雰囲気は違う。同書では7つのルートを紹介しているが、下川さんによれば、初心者向けは台湾。
「日本語がわかる人が多く、列車の運行がしっかりしています。時刻表が手に入れば、予定が立ちます」
ほかには韓国も列車の本数が多く、言葉の問題をのぞけば旅しやすいそう。
逆にディープなアジアの魅力を感じられるのは、タイ。窓の開く車体、車内販売のおもしろさ、おかしい乗客たち……など、まさにローカルラインの真骨頂。ただ、中国、ベトナム、フィリピンあたりもそれぞれにおもしろく、タイとの差はあまりないそうだ。
写真も豊富で、巻頭のカラー写真と本文中の数百枚の写真が、アジア特有の空気感をよりリアルに伝えてくれる。撮影は旅の同行者であるフォトグラファー中田さん。
「アジアの鈍行列車に乗ってみて感じたのは、何よりもそこには生活があるということです。
『鈍行列車のアジア旅』(下川裕治、中田浩資[写真]/双葉文庫)はタイ、マレーシア、ベトナム、中国、台湾、韓国、フィリピンを鈍行列車でまわったユニークな旅の記録だ。
アジアの鈍行列車旅なんて聞くと、バックパッカーの若者を連想する人もいるかもしれないが、著者の下川さんは1954年生まれの57歳。ヘンにはしゃいだりせず、かといって冷めているわけでもなく。冷静な観察眼を保ちつつどこかお茶目で、その場の空気に自然となじんでゆく。淡々としているようで、車内の雰囲気が手に取るようにわかる文章が小気味よく、思わずププッと吹き出してしまうエピソードもいっぱい。椅子に座って背を正して読むというより、畳にでもゴロリと寝転がって読みたい一冊だ。
ひとくちでアジアの鈍行列車といっても、地域によってだいぶ雰囲気は違う。同書では7つのルートを紹介しているが、下川さんによれば、初心者向けは台湾。
「日本語がわかる人が多く、列車の運行がしっかりしています。時刻表が手に入れば、予定が立ちます」
ほかには韓国も列車の本数が多く、言葉の問題をのぞけば旅しやすいそう。
逆にディープなアジアの魅力を感じられるのは、タイ。窓の開く車体、車内販売のおもしろさ、おかしい乗客たち……など、まさにローカルラインの真骨頂。ただ、中国、ベトナム、フィリピンあたりもそれぞれにおもしろく、タイとの差はあまりないそうだ。
写真も豊富で、巻頭のカラー写真と本文中の数百枚の写真が、アジア特有の空気感をよりリアルに伝えてくれる。撮影は旅の同行者であるフォトグラファー中田さん。
「アジアの鈍行列車に乗ってみて感じたのは、何よりもそこには生活があるということです。
生活や文化の移り変わりが鈍行のスピードでゆっくりと感じられました。どこかに行って何かをするのではなく、移動そのものが旅なんだと実感しました」
空調がコントロールされ、窓が開かない近代的な車両もあるが、やはり開けっ放しの窓こそ、光と温度をダイレクトに感じられる鈍行の醍醐味とのこと。ちなみに、プラットホームで撮影に夢中になっているあいだに電車から完全に閉め出され、手でこじ開けて入った経験もあるそうだ。
最後に、下川さんにアジア鈍行列車旅を成功させる秘訣を聞いた。
「台湾、韓国以外は、なんとかなるという楽観的な気持ちが必要。それからひとりの場合は荷物を少なめに。駅でトイレにいったり、切符を買ったり、荷物を持ちながらですから。スーツケースはやめたほうがいいかも。列車にも乗せにくいし」
時刻表も必須ツールだが、どうやって手に入れるかがけっこう大変らしい。
身近なアジアが新たな表情で迫ってくる鈍行列車の旅。とりあえず、この本を読むだけでも、アジアのローカルラインに乗っている気分は相当味わえます。
空調がコントロールされ、窓が開かない近代的な車両もあるが、やはり開けっ放しの窓こそ、光と温度をダイレクトに感じられる鈍行の醍醐味とのこと。ちなみに、プラットホームで撮影に夢中になっているあいだに電車から完全に閉め出され、手でこじ開けて入った経験もあるそうだ。
最後に、下川さんにアジア鈍行列車旅を成功させる秘訣を聞いた。
「台湾、韓国以外は、なんとかなるという楽観的な気持ちが必要。それからひとりの場合は荷物を少なめに。駅でトイレにいったり、切符を買ったり、荷物を持ちながらですから。スーツケースはやめたほうがいいかも。列車にも乗せにくいし」
時刻表も必須ツールだが、どうやって手に入れるかがけっこう大変らしい。
身近なアジアが新たな表情で迫ってくる鈍行列車の旅。とりあえず、この本を読むだけでも、アジアのローカルラインに乗っている気分は相当味わえます。