金庫がどれほどの役に立つか、実際難しい問題である。ある程度の重量と鍵の機密性、流石にアニメみたいにする道具があれば別だが。あとどれほど強固であろうとも所詮人が作ったもの。持ち出す気になればいくらでも手段はある。コンビニのATMが盗まれるくらいだ。
先日、東日本大震災の津波で流された5700個もの金庫が警察に届けられ、23億円近い現金が持ち主に返されたという報道があった。
ところで、かつてはテレビの通販番組などでもよく扱われていた金庫。親世代などには金庫を所有する人が多い気がするが、今、身の周りで自宅に金庫がある人はずいぶん少ないように思う。
金庫の需要は、時代とともに変わっているのだろうか。また、震災を機に見直されているのだろうか。金庫を中心とした製家具類の製造・販売等を行う事業連合会「日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会(日セフ連)」に聞いた。
「金庫はもともと成熟商品のため、大きく伸びるということはありませんが、震災関連で需要が伸びているということは聞きます」
金庫を所有している人は若い人に少なく、高齢者に多い気がするが、財産の有無や金庫に対する意識に世代差があるのだろうか。
「確かに金庫所有者には高齢者が多いですが、お金を持っているからというよりも、『金庫を購入するタイミングがあるかどうか』が大きいと思います。金庫には現金を入れておくというより、家の権利書や貴重品など財産的なものを入れる人が多く、家を購入したときなどに『権利書を入れておく場所がない』と考え、その機会に金庫を買っておく人が多いんですよ」
金庫そのものの時代による変化もある。
「かつてはダイヤル式の開閉がメインでしたが、今では減り、指紋照合や棒で開けるタイプなど、簡便化しています」
さらに、近年需要が伸びているのは、「貸金庫」で、銀行でも顧客の取り込みに積極的だという。
「昔は貸金庫というと、銀行員が立ち合う面倒くささがありましたが、いまは全自動貸金庫のブースに行くだけ。気軽に利用できるうえ、銀行側も貸金庫に人員を割かなくて良いというメリットがあるんですよ」
また、金庫の使い分けも、重要だとか。
「金庫には大きく分けて2種あり、『防盗金庫』の場合、泥棒が開けにくいようになっているため、開閉に時間がかかり、現金や有価証券を入れておくのに適しています。
一方、『耐火金庫』は、開けやすいので、権利書などに向いており、現金はあまり入れないほうが良いとされています」
この「耐火金庫」には20年という「寿命」があるそうだが、なぜ?
「紙が燃えないようにするためには、JIS(日本工業規格)で、庫内最高温度を177℃以内に保つことが定められています(30分・1・2・3・4時間耐火がある)。現在の耐火金庫は、『気泡コンクリート』という水分と結晶水を含んだ耐火材を使用しており、火災のときに水分を放出して温度を下げるようになっているのですが、長年の使用で水分が少しずつ気化すると、本来の耐火性能が維持できなくなるんです」
その目安が、「20年で約20%劣化状態になる」ことから、耐火年数が20年と定められているのだそうだ。
ちなみに、東日本大震災で流された金庫は、水は浸み込んだものの、中の書類はほとんど無事だったという。
「金庫」=「お金持ちのもの」というイメージもあったが、何があるかわからない時代、改めて金庫の重要性を考えてみるのも良いかもしれない。
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