空き缶リサイクルからボールペン作りまで、細かい作業でも地道にお金をためることは出来ます。身近なものでも意外なところがそれを求めてるなんて良くある話かもしれません。
「黄金の10月」というドイツ語の表現があるように、秋のドイツは、まさに黄金一色。
傾きかけた太陽に照らされる遊歩道をそぞろ歩けば、最高級ホテルのカーペットほどに厚く積もった落ち葉が、足下でカシャカシャと乾いた音をたてています。
そんな風景の中で出会うのが、大きなカゴや手さげ持参で、木の実集めに熱中する子どもたち。イヤ、子どもだけではなく、パパもママも家族総出で、どんぐり拾い、栗拾いに精を出す光景が風物詩になっています。
集めた木の実で工作をしたり、お手製アクセサリーを作ったり、秋のインテリアとして家の中に飾ることが多いのですが、実は、おこづかい稼ぎが目的で、せっせと木の実を集める市民もいるようです。と言うのも、こうして集まった「収穫物」を、気前良く買い上げてくれる自治体があるからなのです。
「栗10キロで4ユーロ、どんぐりは10キロで8ユーロで、現金買い取りします。受け付けは◯月◯日のみ。事前予約は不要ですので、直接ご持参下さい」という、某自治体の林野局の広告を初めて目にした時には、大いに驚いたものです。
現金払いをうたい文句に、市民に木の実集めの重労働をさせるなんて、路上掃除の手間を省こうという、自治体の腹黒い作戦じゃあるまいな。そう勘ぐったのは、大いなる勘違い。本当の目的は誠に健全で、長く厳しい冬に激減する、野生動物の備蓄飼料に充てるためだったのです。
ところで、どんぐり10キロって、一体どのくらいの個数集めればいいのだろうかと思い、買い物帰りに拾ってきたどんぐりを計って計算してみると、結果は何と2,500個。2,500個ものどんぐりを集めて、町外れにある林野局備蓄倉庫まで運搬すれば、8ユーロ(1ユーロ=100円換算で800円)の報酬を受け取れるというわけです。2,500個集める手間や運搬時の交通費を考慮すると、魅力的な臨時収入とは言い難いですが、木の実を拾う楽しみも満喫できたし、野生動物もこれで満腹になれるし、林野局も満足していることだろうし、「満」が3つも揃ったところで、円満ということにしましょうか。