その真骨頂はやはりオカマであろうが彼らが激怒するとむしろ標準語になる。一種の変身願望かもしれないが、聞いている分には自然に聞こえるのならば些細な問題かもしれない。
「他人が幸せだったら、なんだって言うの!?」
「ンねえ、今夜もこうっ、ンねえ、だっ、仕事を調整したんだぞ!」
さて問題。冒頭の2つは、男女どちらのセリフでしょうか。
正解は、いずれも男性。これらは3月に終了したドラマ『美しい隣人』での渡部篤郎のセリフである。
怖いおとぎ話のような珍妙な世界が繰り広げられた同ドラマの中で、ヘンにリアルだったのが、渡部篤郎がキレる際の冒頭のようなセリフだ。
男性が怒る際、「~なのよ!」「~~なの!?」「ねえ、〇〇でしょ!?」「もうっバカっ!」など、通常よりも女性寄りの口調になる場面は、実際にときどき見ることがある。これはいったいなぜ? どういう心理からなのだろうか。
『モテるデート』『モテる出会い』(共に、あさ出版)等、性差の心理学に関する多数の著書がある心理コーディネーターの織田隼人氏に聞いた。
「これには2つのパターンが考えられます。1つは、脳内での自分の思考で女性言葉を使っている男性です。周りに女性が多かったり、女性に向けての仕事をしていたり、自分の脳内で女性のような言葉で自己対話をしている人に多いですね」
なぜ怒るときにだけ「オネエ言葉」になるかというと……。
「怒っているときには思考を整理することができずに、自分を取り繕えないもの。だから、思ったことそのままが言葉になり、自分の思考がオネエ言葉で作られている人は、そのままオネエ言葉でしゃべってしまいます」
「怒るときだけ英語になる」とか「怒るときだけ関西弁になる」なんて人の話もときどき聞くけれど、それに近いのだろうか。
「2つは、『怒ったときでもきつく言い過ぎないように』と思ってしゃべったらオネエ言葉になる男性です」
そういえば、SMAP・中居正広やカンニング竹山、大泉洋などがバラエティ番組などで「キレる」体で笑いをとるときにも、「なによ!?」「~なのよ!」などと、ややオネエ言葉になることがある。これは2つめのパターンということか。
余談だが、「~わ」「~よ」「~かしら」などの語尾は、自分が子どもの頃は現実世界で聞いたことがなく、「『ドラえもん』のしずちゃんや、のび太ぐらいしか使わない」と思いこんでいた。あるいは、昔の小説などで男性が使う「○○かしらん」を見かける程度。
関西弁や、自分の出身地・長野などでも「そらそうだわ」などとは言うが、この場合の「~わ」は語尾を下げる言い方で、明らかに別モノ。
だが、上京してから、東京では女性も、さらに男性でも「~わ」「~かしら」という語尾を使う人がけっこういることに驚いたことがある。
たかが語尾、されど語尾。そこには地域性や抑えきれない感情、思考の整理パターンなど、さまざまなものがあらわれるようです。