風が吹けば桶屋が儲かるといった前振りを投げたまま、偶然のつながりも元から辿って行けば美しい道の連なりになるものだ。小説の始まりと終わりだけを知っている状態が日常耳にする大半なのだから。
突然だが、“バタフライ効果”というものをご存知だろうか?
知らない方も、「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」とか、「アマゾンを舞う1匹の蝶の羽ばたきが、遠く離れたシカゴに大雨を降らせる」といった、ことわざめいたものなら聞いたことあるのでは?
小さな蝶が、めぐりめぐって大きな影響を及ぼすというこの効果は、ちょっと難しそうに聞こえるが、物理学的にも“初期値過敏性の法則”として認められているようだ。これは人の行動にもあてはまる。
このバタフライ効果に着目した1冊の本が、静かな感動を呼んでいる。『バタフライ・エフェクト 世界を変える力(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』は、アメリカで起こった、ノーマン・ボーローグという人物の小さな行動が世界中の人々の命を救ったという実話がまとめられている。
今節電をしたり、募金をしたりと自分にできることを試しているものの、あまりにも自分がちっぽけすぎて意味あるのかな~と思ったりしていた時に、この本を読んでみたところ、
「いや、私の行動捨てたものじゃないかも!」と思わせてくれた。ありがたい1冊である。
そこで、担当編集者にこの本をつくろうと思ったきっかけを聞いてみた。「この本の翻訳者でもある弓場隆さんから、著者アンディ・アンドルーズさんの本2冊をご紹介いただきました。どちらにも“バタフライ効果” と、ノーマン・ボーローグから人と人のつながりをさかのぼっていく物語が描かれていて、とても感動しましたので、この2冊をまとめて1冊にしようと考えました」とのこと。
さらに「人が人に影響を与え、一人ひとりの小さな行動が大きな力となって世界を動かしていくという考え方は、誰に対しても勇気を与えてくれるものだと思います。きっと多くの人に共感していただける」と思い制作にあたったという。まさに「自分のささやかな募金がどこかの誰かの役に立っているはずだ!」と思い直した私は、編集担当の方の思惑通りとなってしまった。
また、「一人ひとりが他の人に影響し行動がつながっていくという本書のテーマが、文章と写真との組み合わせで自然と伝わるように」工夫されたという。文字数が多くないので読みやすく、シンプルだからこそ読んだ人の心に響いてくるのかもしれない。