機械尽くしの未来に人のぬくもりは消えてしまうのかと憂いでしまうが便利さには返られない。そんな豊かな心を忘れかけたゆとりの真骨頂。
今まで、いくつかの変り種自動販売機を取材してきた。“バナナ自動販売機”だったり、または“リンゴ自動販売機”だったり……。毎回、「こんな物にも自販機が!」と新鮮な感動があったものだ。
ただ、今回の自販機の感動は新境地。ここまできたか。話題にもなったが、東京都中央区にある「スペースインターナショナル株式会社」では、1月18日より“純金の自動販売機”を、同社のエントランスに設置している。
また、自販機でスゴいものを……。このような試みを開始したきっかけを、同社に直接伺ってみた。
「『どうしても、日本人には“純金”が必要だ!』と考えたのが、きっかけでした」(同社・六川社長)
現在、日本の経済は不安定な状態。そんな時に紙幣だけでお金を持っていることは不安定。そんな風に同社は考えた。
「現在の日本で、『紙幣がいつ紙切れになってもおかしくない』という不安は絵空事ではありません。しかしそのような考えを、日本人の9割の方は持っていないと思うんです。そこで『自分の持っている資産を“純金”に換えて持っていた方がいい』という、啓蒙活動としての自販機設置でもあります」(六川社長)
ただ、言っても純金である。気軽にできる買い物ではない。そこで、この自販機では金貨と銀貨と純金バーを取り扱っている。
「一番安いのは銀貨で3,350円くらいです。一番高いものはオーストラリアの金貨で、42,000円くらいです」(六川社長)
当然、価値は日々変動していくので、これらは目安的な価格だと考えていただきたい。
では、この自販機に中でも特に人気の品は?
「オーストラリアのカンガルー金貨1/10オンスと1/20オンスが、よく出ている印象があります」(六川社長)
それぞれ、15,250円と8,630円(5月12日現在)。なるほど、それなりに手を出しやすい金額かもしれない。
ただ、今まで「純金を購入しよう!」と思い立ったことは正直なかった。それは、多くの方にとっても同様だろう。
……実際に、この自販機を利用する人はいるのだろうか?
「毎日、購入される方はいらっしゃいます。ただ、安い物ではないので興味本位ではなく、それなりに目的を持っている人がほとんどです」(六川社長)
訪れる方々の層も幅広い。ビジネスマン風の人や、年金暮らしの方。それだけでなく、中学生や高校生の姿もあるというのだから、何とも目的意識の高い若人たちではないか……。
そして、そんな方々からの反響も続々と。
「『簡単に買えて良かった!』というお声を多くいただいております。他で買うと手続きが大変ですし、どこで買っていいかわからない人も多いみたいです」(六川社長)
例えば、宝飾店や銀行で購入する場合。純金の購入はかなり手間のかかるものらしい。しかし、この自販機ならばすぐに購入することができ、その上「純金保証書」も付けられている。
そんな、この“純金の自動販売機”が設置されているのは、日本でここだけ。現時点では、1台しかないそうだ。
「この自販機は採算がなかなか合わず、ほとんどボランティアでやっていることなんです。ですので、台数を増やすのは難しいのが現状です」(六川社長)
なかなかに利益を上げるのは困難な試み。六川社長と同じ志を持った人が現れたら、このような自販機は増えるかもしれない。
度肝を抜かれる自販機だ。そして、その目的意識の高さもケタ違い。小さい金額からも購入できるので、気軽に立ち寄ってみるのもいいかもしれない。