最近の模型や玩具のクオリティーはすげーなと思う反面、どうせ地形があるなら地元のほうが興味も湧くもの。流石に四十七都道府県全部を作れなんて無理はいいませんが。
先日終了したドラマ「仁」のオープニングで、高層ビルなどが建ち並ぶ東京の全景が瓦屋根が広がる江戸の街並みと重なる映像を見るたびに、不思議な懐かしさを覚えてしまった。もちろん江戸時代から生きていたわけではない私だが、日本人のDNAが呼び起こすのか“経験のない懐かしさ”とでもいうべきものが、人間の感情のどこかに組み込まれているのかもしれない。そんな心理を具現化してくれるかもしれないモノが、ジグソーパズルとなって登場した。
その名は『4D CITY SCAPE TIME PUZZLE』。東京やニューヨーク、ロンドンなど世界の都市を、ビルや港や有名建造物といった立体パーツなどを組み合わせて作っていくジグソーパズルなのだが、最大のポイントは“歴史を体験するパズル”という点。作られた建造物を古い順に組み込んでいき、現在に至る都市の形成の有様を自分の手で体感できるという、まさに時空を越える=四次元のパズルなのである。
東京の場合、残念ながら「仁」の世界である幕末の江戸まではカバーされていないが、まずは映画『ALWAYS 三丁目の夕日』でおなじみの昭和33(1958)年頃の街の地図が描かれたパズルを組んでいく。まだ都心のあっちこっちを都電が駆け抜けていた頃で、紙面には都電の路線図が細かく描かれている。そこに当時からあった立体パーツを組み込むのだが、この時点では立ったばかりの東京タワーや浅草寺、明治神宮、上野駅など点数は数えるほど。サンシャイン60が立つ場所は太平洋戦争の戦犯が収容されていた「巣鴨プリズン」が地図上に描かれている。
そこから、東京オリンピックにあわせて武道館や代々木体育館が建ち、霞ヶ関ビルが出現し、新宿駅の西に広がる淀橋浄水場の上に高層ビル群が並んでいく。さらにお台場周辺の埋め立てが進み、バブル期の六本木界隈の建物群が加わったり東京ドームができ、丸ノ内・汐留の再開発を経て、来年完成予定の東京スカイツリーの登場に至る。
また、立体パーツと並行して、都電が走る街の図は首都高速網が描かれた2層目の地図が重ねられていくというのがパズル完成までの流れだ。
発売元であるジグソーパズルの老舗・やのまんの開発担当者の方は、「新宿の高層ビル以降、西から東へ開発の動きが移っていく様子がパズル上で手に取るように見えるのが面白いです」と話す。
ただ、地図の縮尺と立体パーツのスケール比には少々無理があるのも事実。そこは多少デフォルメを加えざるを得なかったようだ。「ニューヨークはマンハッタン島だけにしたりと他の都市は狭い地域を対象しているのですが、皆さんが知っている東京となるとあれもこれも入れないと、という結果として範囲が大きくなりすぎてしまった」とは担当者の談。
ところで、時空を越えるというからには未来の表現はないのかと思うのは自然。実は1100ピースと91の立体パーツによって完成を見るパズルには、もう1つ、エキストラパーツが存在する。そのパーツは昭和33年の最初のパズルにあったものの一つを差し替えることになるのだが、それが何なのかお分かりだろうか。ヒントは“東京の玄関口”だ。