固定概念で切り捨てては新たな発見はできない。馴染み深いものと特産品とのコラボレーションがこの例である。多少のジョークも受け入れられれば勝ちです。
全国には、様々な名物産業がある。愛媛県今冶市の「タオル」。岡山の倉敷で言えば「ジーンズ」。そして、福井県鯖江市の「メガネ」……。いずれも、名産品として全国的に有名ではないだろうか。
そこで、我が故郷の話をさせていただきたい。埼玉県さいたま市。何がある? ……正直、思い浮かばない。20年近く住み馴染んでいた、愛する町だというのに。
しかし、これは私の勉強不足だった模様。しっかりと、さいたまには名産があったのだ。それを教えてくれたのは、この新商品。さいたま市では、5月1日より“地サイダー”として『大宮盆栽だー!!』を発表したそうである。
おわかりだろうか? サイダーだ。「盆栽だー」という名の。もう、皆まで言うまい。
そこで、同市に盆栽のサイダーを製作した経緯を伺ってみた。
「ある商店会長さんが、たまたま旅行先で出会った流行の“地サイダー”を見て、わが町自慢の『盆栽』と『サイダー』をかけたら、面白いのではないか!? と、きっかけはオヤジギャグでした(笑)」
そうか。やっぱり、オヤジギャグか……。
ただ、それだけではアレなので、さいたまと盆栽のゆかりについても聞かせていただいた。
「さいたま市には、全国で唯一『盆栽』を名乗る、その名も『盆栽町』という地名があります。その周辺には多くの盆栽園が立地するなど、我が国屈指の盆栽郷となっております」(担当者)
実は昨年、さいたま市では、公設としては日本初となる盆栽専門美術館「大宮盆栽美術館」が開館している。まさに、盆栽の町! だからこそ「盆栽だー」なのである。
ただ、気になるのは味。盆栽のサイダーって、一体どんなテイストなのだろう?
「盆栽味です(笑)。商品コンセプトとしては、盆栽町界隈をお散歩しながら飲めるようなものとして、緑色の瓶である『ラムネ』をイメージ。そこに盆栽の持つ純粋さ、自然美、素朴さ、そして盆栽の定番である『松』のチクチクする感じも込めてみました」
上記のコンセプトの元、「無色透明の混ざり気無し」、「炭酸がややキツめ(=チクチク)」、「のどごしすっきりで、甘さも抑えたシンプルな味」といった要素で構成される、さいたま市の地サイダーが開発された。
それにしても、“チクチクするサイダー”とは興味深い。当然、取り寄せて飲んでみました。
まずはコップに注ぐ。すると、辺りは甘い匂いに。しかし、ここまでは普通のサイダーと一緒。そして、グッと一口飲んでみると……。んっ、確かに炭酸がキツめ! 冷やして飲んだら一層ノドで弾けるから、スカッと爽快!! 確かに、夕暮れ時にのどかな町を散歩しながらいただいきたいサイダーか。もしくは風呂上りに、もしくは仕事終わりに……。とにかく、「スカッ!」としたい時に飲むとイヤなことを忘れさせてくれそうな。味も甘過ぎず、美味!
そんな、この地サイダー。やはり、さいたま市のPRのため、他地域の方々をターゲットに販売される物なのだろうか?
「まずは“さいたま市ブランド”として、永く市民の皆さんに愛されるような商品に育てていきたいと思います。ただ、市外から訪れる人に対しても飲んでいただけるよう、例えば市内飲食店において『大宮盆栽だー!!』を使ったご当地カクテルを広めていくなど、さらなる話題づくりに努めていきたいと考えています」(担当者)
実はすでに、この地サイダーを購入するため遠方から訪れた人もいるらしい。中には、九州からの問い合わせも! 早くも、物凄い求心力である。
そんなこの『大宮盆栽だー!!』は、5月7日より本格販売が開始されている。価格は1本(335ml)、税込み200円。販売店については公式サイトで確認することができる。
「名物にうまいものなし」という言葉があるが、それはこれには当てはまらなさそう。地サイダーというくくりがなくても、純粋にクオリティの高い一品でした。