形あるものを残すことが充実した証になるのではないだろうか。何か作るような趣味を持ってるとほどほどに日常をエンジョイできる。怠惰に過ごしていると仕事だけで何のために生きているのか分からなくなると思う。
お決まりのセリフで申し訳ないけど、言わせていただきたい。もう、6月かよ! つい、こないだ新年を迎えたばかりだと思っていたのに。
この半年、自分は有意義に過ごせていただろうか? ……毎年、こんな悔恨をしている気がする。いい加減、一日一日を噛み締めて生きる自分でありたいのだが。
そんな私でも、このカレンダーがあれば変わるかもしれない。過ぎし日が、形となって目に見えるから。
ドイツのデザイナーであるパトリック・フレイ氏が製作した『グレゴール』は、一枚の細長いニット生地でできた2012年版カレンダー。表面にプリントされている沢山の数字は、いわゆる日付だ。これを毎日確認し、過去となった日の分だけ少しずつ糸を解いていく。そうすると、日を追うごとにカレンダーの生地は短くなり、床に溜まる糸の玉は日に日に大きくなっていくことになる。
要するに、これは形を変えた日めくりカレンダーである。ただ、通常の日めくりカレンダーは過ぎ去った日がゴミとなるだけ。『グレゴール』は、解かれた糸が山となり積もってゆく。それが日々の積み重ねとなり、自身の過去を視覚的に認識することができるというわけだ。
己の道程を顧みるのに、打ってつけではないだろうか。だけど、もう1つの魅力も。単純に、デザインが良い。アート作品としても秀逸だと思うのだ。そこで、『グレゴール』を販売しているトリコに伺ってみた。このカレンダーは、主にどういう空間で使用されている?
「個人宅、デザイン事務所、オフィスの応接室などで、飾っていただいております。このカレンダーならば、生活感を全く漂わせることなく日付を指し示します」(担当者)
これをハンガーにかければ、それはまるでスカーフのよう。どんな部屋にも馴染みやすく、主張し過ぎるグラフィカルなカレンダーよりも生活に自然に取り入れることができる。
では、一年後はどうする? 有意義な12ヶ月を過ごしたとする。最後に残ったのは、時の流れを感じさせる365日分の糸たち。
これを、そのまま廃棄するのは名残惜しいのだが……。
「ただ捨ててしまうのも寂しいので、一年の終わりにはこの糸で手袋やマフラーを編んでもらう。そんな提案もさせて頂いております」(担当者)
この『グレゴール』は、トリコのウェブサイトか、同社のショールームで今年の7月より販売される。価格は10,500円(税込み)。
「もう6月か!」と嘆いてしまった、冒頭の自分。このままだと、きっと来年の6月も、そして来年の大晦日だってすぐに訪れてしまうに違いない。
その時は、嘆きではなく「俺は、頑張った!」と己を褒めてあげる自分でありたい。このカレンダーと共に……。