曲であっても初めから激ヒットなものもあれば、噛むほど味が良くなるように徐々に虜になるものもあるだろう。それは曲に限ったことではない。
「まるでタモリ倶楽部……」
とある夜、都内某所のカフェで、こう思わずにはいられなかった。
集まった40人もの男女(といっても9割が女性)が、スライドを見たり、「かわいい!」と歓声をあげ写真を撮ったりしている。その主役は、今人気のアイドルグループでも韓流スターでも、自慢のペットでもない。まさかの“コケ”である。
このイベントの名はコケナイト。『コケはともだち』という本の出版を記念し、コケの魅力について語り合うものだった。本書は、コケの生態から観察の仕方、種類などを分かりやすく説明している。
本書の担当編集の方によると、「コケナイト? と何人もの方から怪訝な顔をされたこのイベントにどれほど集まって下さるのか不安でしたが、当日は予想を上回る多くの方が集まってくれました」とのこと。コケの密かな人気はイベントの盛況ぶりでよく分かる。
「そのビジュアルが地味すぎることもあって、脚光の当たりにくい植物ですが、実は地球のありとあらゆる場所で生きているツワモノです。自分に無理をせず、しぶとく生き抜くコケたちに、私たちヒトが学ぶこともある。その第一歩として、コケとともだちになるにはどうしたらいいのか? という疑問に答えるコケ入門書を作ろうと思いました」
家庭菜園に憧れているものの、サボテンすらも枯らしたことのある私は、「コケってどこにでも生えているから、ラクに育てられるのでは?」と、安易な考えから本書を手にした。だが読んでみるとそう簡単なものでもないらしい。
コケは好き好んで道路の端の隙間などに暮らしているので、持ち帰って育てようとしてもすぐに枯れてしまうらしいのだ。入門としては道端や公園での観察や、苔玉を愛でることから始めたほうがいいかもしれない。
本書には、そんな今まで知らなかったコケ情報がたくさん詰まっている。
編集の方のおすすめは、コケ50種を擬人化した図鑑ページだ。「監修の秋山さん、著者の藤井さん、イラストの永井さんの3人に頑張っていただきました。
編集をしていても本当にコケは個性派ぞろいで驚きました。このコケ図鑑を読むと、コケのイメージが大きく変わるのではないでしょうか」
確かに地味で暗いイメージを持っていたのだが、読んでみると「コケってこんなにキレイなんだ! かわいいんだ!」と驚いた。せひ本書でコケの魅力を発見してほしい。