人に揉まれ世に揉まれ、帰って来れば一人きり。友人との付き合いも薄くふと思い出したように孤独感に打ち震える日々、決して少なくはないであろう現代人の夕べ。
実家を出てから、早数年。夕食は、ほぼ独りだ。もはや、90パーセント以上の確率。今も、一人寂しくラーメンをすすったばかり。これが、今日の私の晩御飯。
そんな私に、朗報! 自動車運転管理請負業を手がける「おかかえ運転手株式会社」では、食材の買い出しから配達、屋内での調理、それだけでなく出来上がった料理を一緒に食事、しかも後片付けまでしてくれる「話食屋(わしょくや)」という新サービスを7月より開始した。
しかし、運転業務を行う会社が、なぜこのようなサービスを?
「企業役員を顧客とした運転代行の仕事の8割は“待機”です。自宅にお迎えに行くことも多く、その際『運転手さん、悪いけど、クリーニング店に行ってワイシャツを取ってきてくれない?』など、運転とは関係ない雑用・雑務を頼まれることも大切な仕事のうち。エスカレートすると、もう、便利屋のような状態でした(笑)」(同社・担当者)
それらの雑務の中、ピックアップされたのは「食事」だった。
「これまで長くお付き合いしてきたお客様もご高齢になり、奥様に先立たれるなど、お一人の方が多くいらっしゃいます。ある時、そんなお客様から『メシを作って一緒に食べてくれる女性はいないか?』というリクエストがありました。それがこのサービス誕生のヒントです」(担当者)
食事を作ってくれるだけなら、別に新しくない。同サービスは、食材や料理の買いっぱなし、届けっぱなし、作りっぱなしとは一線を画す。出来立ての温かい料理を面と向かって一緒に食べ、「話し相手になってあげることを特徴とするサービス」にしてみせたのだ。
要するに、キーワードは「話」と「食事」。この2本柱だからこそ、サービスの名称は「話食屋」に。
「最近、愚痴を電話で聞いてあげる新商売が流行っていると聞き、食事に会話を取り入れたサービスを思いついたんです」(担当者)
では、対象となるのは高齢者限定なのだろうか。このサービスに、年齢制限はある?
「隣同士であっても挨拶すら交わさない“無縁社会”や、足腰が弱く買い物にも行けない“買物難民”が増えており、これらの解決策としての『話食屋』です。
なので、年齢制限などはありません」(担当者)
食事を作ってくれて、なおかつ話し相手にもなってくれる友人が欲しいキャリアウーマン。外食に飽き、家庭料理と話し相手に飢えている単身赴任のサラリーマン。どんな人にもうってつけだ。
「ただ、自分で食事ができない方はご遠慮する方針です。お客様の口に食事を入れるなどの業務は、介護などの国家資格が必要となるからです」(担当者)
ちなみに「話食屋」でサービスにあたるのは、全員女性。料理作りと人との会話が好きなところを採用ポイントに選定された、3名のスタッフが在籍している。
「現時点ではOLや主婦の方にお願いすることになります。サービスに人気が出てくれば、女子栄養大学などに求人依頼をしてもいいかなと思っています」(担当者)
そんな、同サービス。実は5月から6月の間にテストマーケティングが行われており、すでに数回実施されている。
画像は、その時の模様。奥さんを2年半前にガンで亡くし、現在は一人で生活する62歳男性からの依頼を受け、29歳の女性が同社から派遣された。
そこからは、“孤独”とはまるで無縁の世界! 酢豚、バンバンジー、生春巻きなどの中華料理が振る舞われ、そして共に食事も。久しぶりの楽しいひと時がプレゼントされる、まさに“話食屋”タイムが繰り広げられたわけだ。
このサービスの料金は、1回(3時間)が8,000円。3時間を越えた場合、延長料金として15分単位で500円。エリアは都内限定となる。
一人より二人で食べる料理の方が美味しいのは、誰もが知っている事実。しかし、なかなか成し遂げられない人が多いのも事実。
このサービスで、明日からの活力をゲットしていただきたい。