子供のおもちゃって童心に返ってみると想像していたより暮らしの役に立つものもあると思う。そこからアイデアを用いて新グッズなどを作成してみてはいかがだろうか。
小さい子供というのは、なんでも大人のマネをしたがるもの。そして、欲しがるものである。2歳になる、わが家の娘も然り。親が食べている弁当を見ては「自分の!」といって自分のものにしてしまうし、親がメガネをつけていれば、自分も欲しいとねだり倒す。
携帯電話に関してもそうだ。パパも、ママも、自分専用の携帯電話を持っている。なのに、どうして、アタチには無いの? アタチの携帯電話は? ねえ、パパ? どうして無いの? どうして、どうして? うえ~ん。
わかった、わかった。あるよ。ある、ある。これがキミ専用の携帯電話だ。といって手渡したのは、自宅にあった紙コップと凧糸でつくった糸電話だった。
思えば、糸電話をつくったのは、小学生以来のこと。記憶を頼りに急遽つくったものだったが、キチンと“通話”はできた。娘もコトの他喜んでくれた。よかったよかった。で終わるところなのだが、ふと思ったことがある。糸電話って、どのくらいの距離まで通話ができるのかしら?
現在30代の筆者が子供の頃には、もちろん携帯電話など無かった。自宅に固定電話はあったものの、家族全員が使用するもののため、長時間掛けることはできない。しかも、家族の前で使わざるをえないため、会話の中身を聞かれるのも恥ずかしい。好意を持っていた近所に住む女の子と、電話で話したいなと思っていたあの頃。糸電話が使えないかな、なんて思ったりもしたものだ。
そんな子供の頃の思いを胸に秘めつつ、“遠距離糸電話”の実験にトライしてみることにした。筆者が住んでいた実家から、好きだったあの子の自宅まで、ザッと見積もって約100メートル。この距離を、今回の実験の最長距離とする。
「そんな長い距離、無理なんじゃない?」と、冷たく言い放つのは、今回の実験に(ムリヤリ)協力してもらう筆者の妻。まあ、たしかにそうかもな。ということで、まずは5メートル仕様の糸電話をつくって実験。
「あー、筆者だが、聞こえるかね」「聞こえるよ」という妻の声は、携帯電話で話すのと大差ないほどにクリアだ。
科学的にいうと、音声を糸の振動に変換して伝達し、それから再度音声に変換するのが糸電話の仕組みらしい。ともかく、糸電話ってスゴイな、と単純に感心してしまう。
本来なら10メートル仕様、20メートル仕様と、少しずつ糸を長くして実験を重ねようと考えていたが、糸電話のスゴさにテンションが上がった筆者、子供の頃の恋心もどんどん強まり、もう目標の100メートルを実験してみたくなった。
糸電話は、糸を直線にピンと張らないと声が伝わらない。100メートルともなると、糸電話を持つもの同士、それなりに力を入れて引っ張り合わないと糸が張れないので、紙コップと糸が実験途中ではがれないよう、ガムテープでしっかりと固定する。
さあ、実験。妻は据え置きで、筆者が100メートル先へと向かう。と、突然走り出したくなった。ああ、ユミちゃん。僕はあの頃、キミともっと話したかったんだ。電話で。もしくは糸電話で。子供の頃の僕の想いよ、ユミちゃんまで届け――。
100メートル先へ到着。“これから話すので紙コップを耳に当ててください”と、妻に手をあげて合図する。高まる鼓動。はたして、100メートルもの遠距離通話が、糸電話で可能なのだろうか。
「もしもし、筆者だが」「聞こえるよ」「あ、ほんとだ。妻の声も聞こえる」「うん。ちゃんと聞こえる」「スゴイな、糸電話って」「ところで、あなた」「うん?」「この100メートルって距離設定。何か根拠はあるの?」「い、いや、なんとなくだけど」「あと、ユミちゃんがどうとかって、つぶやいているの聞こえたけど。誰?」「い、いや」
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